あかすりタオル韓国の銭湯の「イテリタオル」
韓国の銭湯やチムジルバンで、体をこするのに使う目の粗い布。1960年代の釜山で、イタリアから輸入した生地から生まれたと伝わる「イテリタオル」の歴史と、銭湯での使われ方を紹介します。
韓国・釜山1960年代〜入浴今も続いている
概要
韓国では、銭湯(モギョクタン、목욕탕)で湯につかったあと、目の粗い布で体をこすって垢を落とす習慣があります。そこで使われるのが「イテリタオル(이태리타월)」です。「イテリ」は韓国語で「イタリア」のこと。名前にイタリアが入っていますが、生まれたのは韓国だとされます。
緑や赤、黄色の鮮やかな色で、手を入れる袋の形や、ミトンの形に縫われています。銭湯や大型の入浴施設チムジルバン(찜질방)、家庭の浴室で使われる日用品です。日本では「あかすりタオル」の名前で知られています。
歴史
銭湯の広まり
朝鮮時代には、温泉や、汗蒸(ハンジュン)と呼ばれる蒸し風呂が利用されていました。お金を払って大勢が入る大衆浴場が韓国にできたのは、1920年代の初め(1921年ごろ)の平壌で、ソウルには1925年にできたとされます。ただし、1897年の新聞に浴場の広告が出ているとして、始まりはさらにさかのぼるという見方もあります。日本統治時代に日本人が多く移り住んだことで、銭湯の形が広まったと考えられています。
戦後、銭湯の数は大きく増えました。韓国の全国の数は、1960年に770か所、1970年に1,793か所、1990年に8,266か所になりました。今ある町の銭湯の多くは、1970年代から建てられたものです。
イテリタオルの誕生
イテリタオルは、1960年代の釜山で生まれたと伝わります。釜山の織物会社が、新しいタオルを作るためにイタリアからビスコースレーヨンの生地を輸入しました。ところが手ざわりが粗すぎて、ふつうのタオルには向きませんでした。その粗さが銭湯で体をこするのにちょうどよかったことから、あかすりの布として広まったといいます。
考案したのは、2001年に亡くなったキム・ピルゴン(김필곤)氏とされることが多いですが、異説もあります。2003年の韓国の新聞記事では、釜山のホテルの経営者が思いついたという話や、イタリアから輸入した機械で織った布だったという話も紹介されています。キム氏は1966年から1969年にかけて、入浴用の手袋など9種類の実用新案を出願・登録したとされます。
イテリタオルが広まる前は、乾かしたわらや石で体をこすったという話も伝わります。
作り方・使い方
イテリタオルは、ビスコースレーヨンの粗い生地を、15cmほどの袋の形や手袋の形に縫ったものです。湯船にしばらくつかってから、タオルに手を入れて、腕や脚、背中などをこすります。
銭湯には、あかすりを仕事にする「セシンサ(세신사、洗身師)」がいて、料金を払うと全身をこすってもらえます。かつては「テミリ(때밀이)」とも呼ばれました。国立民俗博物館の調査をもとにした報道によると、男性はタオルに巻いて、女性は手袋の形のものを使うことが多いそうです。男性のセシンサが使うタオルは、ソウルや京畿道では短く、江原道・全羅南道・慶尚南道では長いものが多いなど、地域による違いもあります。
生地が粗いため、強くこすりすぎないよう呼びかける皮膚科医もいます。
今の暮らしの中で
イテリタオルは、今も韓国のスーパーや市場、銭湯の売店などで手ごろな値段で売られています。海外では「Korean Italy towel」などの名前でも売られています。
1990年代ごろからは、サウナや汗蒸幕、休憩所、売店などを備え、館内着を着て男女が一緒に過ごせるチムジルバンが広まりました。その一方で町の銭湯は減り、2000年に9,823か所あった浴場業は、2020年1月には6,740か所になりました。そのうち約1,300か所がチムジルバン、約5,200か所が町の銭湯と推定されています。
日本でも、韓国式のあかすりを行う店や、韓国から輸入したあかすりタオルを見かけるようになりました。
よくある誤解・豆知識
イタリア製ではありません。 名前は、生地(または織る機械)がイタリアから来たことにちなむとされます。タオルそのものは韓国で考え出されたものです。
「イテリタオル」の特許はないようです。 韓国の新聞の知的財産の連載は、キム氏らが「イテリタオル」の商標を登録していた一方で、イテリタオルそのものが特許や実用新案として登録されたことはないようだ、と書いています。
韓国の大衆浴場には、いくつもの呼び名があります。 韓国の百科事典は、設備や働きによって「サウナ湯」「蒸気湯」「チムジルバン」などと呼び分けられると説明しています。
参考文献
- 韓国学中央研究院『韓国民族文化大百科事典』「목욕탕(沐浴湯)」 https://encykorea.aks.ac.kr/Article/E0018658
- 韓国学中央研究院『韓国民族文化大百科事典』「목욕(沐浴)」 https://encykorea.aks.ac.kr/Article/E0018656
- 世界日報「동네 목욕탕 “오늘도 목욕합니다” [S 스토리]」2020年1月19日(国立民俗博物館 이인혜『목욕탕-목욕에 대한 한국의 생활문화』をもとにした記事) https://www.segye.com/newsView/20200117510815
- 이가희「[지식재산 스토리텔링] 이태리타올 스토리」ファイナンシャルニュース、2018年4月1日 https://www.fnnews.com/news/201804011238337112
- Kim Hyo-jin「No such thing as soft, fluffy ‘Italy towels’」Korea JoongAng Daily、2003年1月6日 https://www.koreajoongangdaily.com/korea/no-such-thing-as-soft-fluffy-italy-towels/11243016
- 「샤워 루틴에 변화를 줄 때」VOGUE KOREA、2023年10月24日 https://www.vogue.co.kr/2023/10/24/샤워-루틴에-변화를-줄-때/
最終更新:2026-10-11
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