メヘンディヘナで手足に描く模様
ヘナの葉の粉を練ったペーストで、手や足に細かな模様を描く南アジアの習わし。結婚式の前の集まりや、カルワ・チョウト、イードの前夜などに描かれます。歴史と意味、黒いヘナについての注意を紹介します。
南アジア(インド・パキスタン・バングラデシュなど)ムガル帝国の時代(16世紀〜)に広まったとされる模様・飾り今も続いている
概要
メヘンディは、ヘナという低木の葉を粉にして練ったペーストで、手や足に細かな模様を描く南アジアの習わしです。ペーストを細い円すい形の袋(コーン)から絞り出して線を描き、乾いたら落とします。肌には、オレンジ色から赤茶色の模様が残り、1〜3週間ほどで薄れていきます。
インド・パキスタン・バングラデシュ・ネパールなどで、結婚式や祭りのときに描かれます。ヒンドゥー教徒にもイスラム教徒にも親しまれ、宗教をこえて広がっている習わしです。「メヘンディ」という言葉は、ヘナの植物、描かれた模様、そして結婚前の集まりの名前としても使われます。
歴史
ヘナ(学名ラウソニア・イネルミス、Lawsonia inermis)は、中東や北アフリカが原産と考えられている低木です。今はインドやパキスタンにも野生で生えています。古代エジプトでは、ミイラの髪がヘナで染められていた例が知られています。
南アジアでいつから手足に模様を描くようになったかは、はっきりわかっていません。「メヘンディ」という言葉は、ヘナを指すサンスクリット語の「メーンディカー」に由来するとされます。ロンドン自然史博物館の解説では、ムガル帝国の時代(16〜19世紀)に、結婚式や祭りで手足に細かな模様を描く習わしが広まったとされます。今日、世界でメヘンディが知られるようになったのも、インドの影響が大きいと紹介されています。
作り方・使い方
ヘナの葉を乾かして細かい粉にし、水などで練ってペーストにします。レモンの汁や砂糖を加える人もいます。描くのは、手のひら・手の甲・指先・足などです。花やつる草、孔雀、渦巻き、細かな格子などの模様がよく使われます。花嫁の模様はひじやひざの近くまで広がり、描くのに何時間もかかることがあります。
結婚の前には、「メヘンディ」と呼ばれる集まりが開かれます。花嫁の手足に模様が描かれ、家族や友人の女性たちも手を飾り、歌や踊りで祝います。花嫁の模様の中に花婿の名前や頭文字を隠して描き、あとで花婿が探すという習わしも知られています。北インドでは、花嫁の「16の装い(ソーラー・シュリンガール)」の一つにも数えられます。
祭りの日にも描かれます。北インドでは、結婚した女性が夫の無事と長寿を祈り、日の出から月の出まで断食する「カルワ・チョウト」の日に、手にメヘンディを描く習わしがあります。ティージやディーワーリーなど、ほかのヒンドゥー教の祭りでも描かれます。イスラム教徒の家庭では、断食月が明けるイードの前夜「チャーンド・ラート」に描く習わしがあります。どれも、家族や信仰の行事の一部として受け継がれてきたものです。
今の暮らしの中で
ヘナの大きな産地は、インド北西部ラージャスターン州のパーリー県です。中でもソジャトの町は、乾かしたヘナの葉を取り引きする市場があることで知られます。「ソジャト・メヘンディ」は、2021年にインドの地理的表示(GI)に登録されました。
町には、描くことを仕事にする「メヘンディワーラー」がいます。ラージャスターン州では、かつては女性どうしで描き合うことが多かったのですが、今は結婚式に専門の描き手を呼ぶことも増えたといわれます。パキスタンのカラチでは、イードの前夜、市場に1,000人をこえる描き手が並び、大勢の女性が模様を描いてもらう様子が報じられています。
よくある誤解・豆知識
「黒いヘナ」は、ヘナとは別のものです。 ヘナで染まる色は、オレンジ色から赤茶色です。米国食品医薬品局(FDA)によると、黒く染まる「黒いヘナ」には、髪の染料に使われるパラフェニレンジアミン(PPD)が混ぜられていることが多く、PPD だけを使う場合もあります。PPD は、肌に直接つける化粧品には使えない成分です。FDA には、赤み・水ぶくれなどの皮膚の障害が報告されています。英国の皮膚の専門団体は、一度かぶれると、のちに髪の染料でも重いかぶれを起こしやすくなることがあると呼びかけています。
国によって扱いが違います。 米国では、ヘナは髪の染料としてだけ認められていて、肌に描く使い方は認められていません。
入れ墨とは違います。 メヘンディは肌の表面に色がつくもので、針で入れる入れ墨とは違い、日がたつと消えていきます。
色の濃さをめぐる言い伝えもあります。 花嫁の模様が濃く出るほど、夫に深く愛されるという話が、冗談まじりに語られることがあります。
参考文献
- Natural History Museum(ロンドン自然史博物館)、Tammana Begum「The henna plant: transcending time, religion and culture」 https://www.nhm.ac.uk/discover/the-henna-plant-transcending-time-religion-and-culture.html
- U.S. Food and Drug Administration(FDA)「Temporary Tattoos, Henna/Mehndi, and “Black Henna”: Fact Sheet」2024年10月15日更新 https://www.fda.gov/cosmetics/cosmetic-products/temporary-tattoos-hennamehndi-and-black-henna-fact-sheet
- City of Toronto(トロント市保健局)「“Black Henna” in Temporary Tattoo Ink and Paste Is Not Safe」 https://www.toronto.ca/community-people/health-wellness-care/health-programs-advice/bodysafe/black-henna-temporary-tattoos/
- British Skin Foundation による「黒いヘナ」の注意喚起(2015年8月、Duncan Lewis の記事で紹介) https://duncanlewis.co.uk/Legal_News/British_Skin_Foundation_issues_warning_about_black_henna_tattoos_(24_August_2015).html
- Shoba Narayan「A Quest to Master the Art of Henna」Smithsonian Magazine、2016年2月17日 https://www.smithsonianmag.com/travel/henna-wedding-india-tradition-art-craft-180958087/
- Indian Culture(インド文化省のポータル)「Karva Chauth」 https://www.indianculture.gov.in/stories/karva-chauth
- Khem Chand・B. L. Jangid・B. L. Gajja「Economics of Henna in Semi-arid Rajasthan」『Annals of Arid Zone』41巻2号、2002年 https://doi.org/10.56093/aaz.v41i2.65744
- Naimat Khan「On the night before Eid, markets in Karachi become henna havens」Arab News Pakistan、2023年4月 https://www.arabnews.pk/node/2291336
- Wikipedia「Mehndi」 https://en.wikipedia.org/wiki/Mehndi
最終更新:2026-10-11
このページは、世界の装いと美容の品を、歴史と文化として紹介するものです。医療上の効果や、美容上の効果を保証するものではありません。肌に合わないときは使用をやめ、気になることは医師や薬剤師に相談してください。民族や信仰にかかわる装いは、その意味を尊重して紹介しています。