世界じょうしき図鑑住まう

トゥルッリ円錐屋根の石積みの家

イタリア南部プーリア州の、モルタルを使わずに石灰岩を積んで作る円錐屋根の家です。アルベロベッロには1,500棟あまりが並びます。税の話が伝わる町の歴史と、貯水槽やかまどのある家の暮らしを紹介します。

イタリア・プーリア州アルベロベッロ14世紀半ば〜(今の町並みは16〜18世紀に広がった)家のかたち今も続いている

概要

トゥルッリ(trulli。1棟はトゥルッロ trullo)は、イタリア南部のプーリア州に見られる、石灰岩を積んで作る家です。モルタルを使わずに石を積み上げて壁を作り、その上に平たい石を少しずつ内側へずらしながら重ねて、円錐形の屋根をかけます。白く塗った壁と、灰色の石の屋根が特徴です。

最も多く集まっているのが、バーリ県の町アルベロベッロです。リオーネ・モンティとアイア・ピッコラの2つの地区を中心に1,500棟あまりが並び、1996年に「アルベロベッロのトゥルッリ」としてユネスコの世界遺産に登録されました。ユネスコは、今も人が住んでいることを、この町並みの価値の一つに挙げています。

歴史

石をモルタルなしで積む技術は、先史時代から続くものとされます。ユネスコは、アルベロベッロのトゥルッリには14世紀半ばにさかのぼるものがあるとしています。一方で、16世紀半ばからの約100年間に、開拓に来た農民の家として作られたと説明する辞典もあります。

この土地は、コンヴェルサーノ伯(アックアヴィーヴァ家)の領地でした。伯は農民を住まわせて土地を開かせ、町は1620年ごろから大きく広がりました。トゥルッリがモルタルを使わない理由には、よく語られる説があります。当時のナポリ王国では、新しく集落を作ると税がかかりました。そこで、調べが来たときにすぐ壊せるよう、わざと崩しやすい作りにさせた、というものです。

1797年、ナポリ王フェルディナンド4世がアルベロベッロを王の直轄の町とし、伯の支配から解きました。同じ年の6月22日、最初の町長が選ばれた日に建て始められたと伝わる「カーサ・ダモーレ」は、町で初めて正式にモルタルを使って建てた家とされます。

住まいの風景

トゥルッロは、ふつう円錐の屋根1つの下に1つの部屋があります。部屋を増やすときは、となりにもう1つ建ててつなげました。博物館になっている旧ペッツォッラ家は、15棟のトゥルッリがつながった家です。

家を建てるときは、まず床の下に雨水をためる貯水槽を掘り、掘り出した石を壁に使いました。水の少ない土地なので、屋根に降った雨は軒から石の溝を伝って、この貯水槽に集まります。家で使う水は、足もとの貯水槽からくみ上げました。屋根へは、細い石の階段で上がります。

厚い壁の中には、火をたくかまどや、壁をくぼませた小さな空間(アルコーブ)が作りこまれました。古い作りの家は、かまどとアルコーブのある1部屋だけの簡素なものでした。かまどで煮炊きをし、アルコーブは寝る場所にも使われたとされます。

町の人の多くは、まわりの畑で麦やブドウを育てていました。アイア・ピッコラという地区の名は、18世紀にこのあたりにあった小さな脱穀場(アイア)から来ています。19世紀の初めには、この地区の約400棟に約1,300人が暮らしていました。2階建てのトゥルッロ・ソヴラーノでは、円錐の屋根の内側を2階とし、客間や機織りの部屋に使いました。

今の暮らしの中で

アルベロベッロは人口1万人ほどの町です。リオーネ・モンティには1,000棟あまりのトゥルッリが8本の平行な道に沿って並び、今は多くが店として使われています。町の案内によると、アイア・ピッコラは店のない地区として残っています。

トゥルッリの中には、中を見学できる家もあります。旧ペッツォッラ家は地域博物館に、カーサ・ダモーレはトゥルッリの世界遺産を紹介する施設になっています。空積みの技術は、今もこの地方で使われています。

よくある誤解・豆知識

かつては禁じられた作り方でした。 1843年の町の規則で、空積みの建物は、モンティの通りを除いて禁じられました。モンティに住む人々は貧しく、例外とされたのです。町は、このことが今のモンティの町並みが残る一因になったと説明しています。

屋根のてっぺんの飾りは、職人の目印ともいわれます。 屋根の先には「ピナーコロ」と呼ばれる石の飾りがあり、形は家ごとにさまざまです。屋根に白い記号を描いた家もあり、その意味にはいろいろな説明があります。

名前はギリシャ語にさかのぼるとされます。 トゥルッロは、丸屋根を意味するギリシャ語の「トゥルロス」から来たと説明されます。

参考文献

最終更新:2026-10-18

このページは、世界の住まいの習わしを、歴史と文化として紹介するものです。建築や設備についての助言ではありません。今も人が暮らす家や集落を訪ねるときは、住む人の暮らしを妨げないよう、現地の案内に従ってください。

あわせて読みたい