易64の卦で問いに答える
古代中国で生まれ、儒教の経典『易経』にもなった占い。陰と陽を6本重ねた六十四卦で、問いへの答えを読み解きます。
発祥:中国周代(紀元前1千年紀)〜カード等を引く体験できる
易で占う
ひとつの問いを決めて卦を立てると、AIが卦の意味を問いに合わせて読み解きます。
易とは
易(えき)は、古代中国で生まれた占いです。陽と陰を表す線を6本重ねた「卦(か)」を出し、その卦に結びついた言葉から問いへの答えを読み解きます。占いの言葉をまとめた書物が『易経』で、「周の時代の易」という意味から『周易』とも呼ばれます。
『易経』は、のちに儒教の大切な経典「五経」のひとつに数えられました。占いの書であると同時に、世の中の変化をどう受け止めるかを考える哲学の書としても、長く読み継がれてきました。日本でも古くから学ばれ、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」ということわざが生まれるほど身近な存在です。
易の由来と歴史
亀の甲羅から植物の茎へ
中国の殷(いん)の時代には、亀の甲羅や動物の骨を焼き、できたひび割れで吉凶を判断する占い(甲骨の占い)が盛んでした。続く周の時代になると、植物の茎を数えて卦を出す「筮(ぜい)」の占いが多く行われるようになったとされます。易は、この流れの中で形づくられた占いです。
伝承と学説
古くからの言い伝えでは、伝説上の帝王・伏羲(ふっき)が八卦をつくったとされます。さらに、周の文王が卦の言葉を、文王の子の周公が各線の言葉を整え、孔子が解説を書いて集大成したとも伝えられてきました。
ただし、これらはあくまで伝承です。現在では、本文にあたる「経」は周代に、解説にあたる「伝」は周の終わりから漢の初めにかけて、少しずつできあがったと考えられています。
経と十翼
『易経』は大きく二つの部分からなります。一つは「経」で、六十四卦と、卦ごとの言葉(卦辞)、線ごとの言葉(爻辞)でできています。経は上経30卦と下経34卦に分かれます。もう一つが、経を解説する10編の「十翼(じゅうよく)」です。
十翼は、彖伝・象伝・繋辞伝(それぞれ上下)と、文言伝・説卦伝・序卦伝・雑卦伝の10編を指します。昔の儒学者は十翼を孔子の作と信じていましたが、宋の時代の欧陽脩(おうようしゅう)がすでにこの説を否定しています。今日では、編ごとに考え方が異なることから、一人の作ではなく、戦国時代から漢の初めごろにかけて段階的に書かれたという見方が有力です。
十翼、とくに繋辞伝によって、易には陰陽の哲学や宇宙のなりたちについての考えが加わりました。こうして易は、占いの書から思想の書へと性格を広げていきました。
日本への伝来
『日本書紀』には、6世紀中ごろの欽明天皇の時代に、百済へ易博士の派遣などを求めた記事があります。伝来の時期は辞典によって5世紀・6世紀・奈良時代と説明が分かれますが、古代から知られていたことは確かです。
律令の時代には陰陽寮が置かれ、占いを担当する役人がいました。室町時代には、下野国(今の栃木県)の足利学校で易がさかんに学ばれました。江戸時代には儒学の広まりとともに易の研究が進み、町には易占いを仕事にする人も増えたとされます。
仕組み:八卦と六十四卦
陰と陽の線「爻」
易の基本は、切れ目のない陽の線(⚊)と、真ん中が切れた陰の線(⚋)です。この線を「爻(こう)」と呼びます。爻は下から上へ積み上げていき、いちばん下を「初爻」、いちばん上を「上爻」と呼びます。
八卦
爻を3本重ねると、2×2×2で8通りの形ができます。これが「八卦(はっけ)」で、それぞれ自然の姿にたとえられます。
| 八卦 | 読み | たとえ |
|---|---|---|
| 乾 | けん | 天 |
| 兌 | だ | 沢 |
| 離 | り | 火 |
| 震 | しん | 雷 |
| 巽 | そん | 風 |
| 坎 | かん | 水 |
| 艮 | ごん | 山 |
| 坤 | こん | 地 |
六十四卦
八卦を上下に二つ重ねると、8×8で64通りの卦ができます。これが六十四卦です。下の八卦を「内卦」、上の八卦を「外卦」と呼びます。卦の呼び名には、天を二つ重ねた「乾為天(けんいてん)」や、火が水の上にある「火水未済(かすいびせい)」のように、上下の八卦を組み合わせたものもあります。
『易経』の並び順では、最初が「乾」、二番目が「坤」で、最後の64番目が「未済」です。「まだ完成していない」という意味の卦で全体が終わるところに、変化は終わりなく続くという易の考え方が表れている、とよく説明されます。
易の占い方
伝統的な筮竹の方法
十翼の繋辞伝には「大衍(たいえん)の数五十、その用四十九」という言葉があります。これにもとづき、50本の筮竹(ぜいちく)から1本を除いて、残りの49本を使います。古くは竹ではなく、メドハギという植物の茎が使われました。49本を二つに分けて数える操作を繰り返し、爻を1本ずつ決めていきます。
正式な「本筮法」では、6本の爻を出すのに18回の操作が必要で、とても手間がかかります。そのため、手順を簡単にした「略筮法」がよく使われています。出た卦を示すには、「算木(さんぎ)」という6本の角材を並べます。
3枚のコインを使う方法
身近な道具で試せるのが、3枚の硬貨を使う方法です。中国でも古くから、銅銭を投げて卦を立てる方法が行われてきたとされます。手順の一例は次のとおりです。
- 占いたいことを一つにしぼり、はっきりした言葉にします。
- 3枚の硬貨を同時に投げ、表を3、裏を2として合計します。
- 合計が6・7・8・9のどれになるかで、爻を1本決めます。
- これを6回繰り返し、下から順に爻を積み上げます。
| 合計 | 名前 | 爻 |
|---|---|---|
| 6 | 老陰 | 陰(陽に変わる) |
| 7 | 少陽 | 陽 |
| 8 | 少陰 | 陰 |
| 9 | 老陽 | 陽(陰に変わる) |
表と裏の数え方は、本によって逆になっていることもあります。大切なのは、最初に決めたルールを最後まで変えないことです。
本卦と之卦
6本の爻で最初にできた卦を「本卦(ほんか)」と呼びます。老陰と老陽の爻は「変爻(へんこう)」といい、反対の線に変わろうとしている爻と考えます。変爻をすべて入れかえてできる卦が「之卦(しか)」です。
読み解くときは、まず本卦の卦辞で全体の様子をつかみます。変爻があればその爻辞を重く見て、之卦を「これから向かう先」として参考にする読み方がよく知られています。ただし、どの言葉を重く見るかは流派によって違います。
豆知識とよくある誤解
日常の言葉になった易
「革命」「観光」「君子豹変」などは、『易経』に由来する言葉とされます。「君子豹変」は今では悪い意味で使われがちですが、もとは立派な人が過ちをきっぱり改めることをほめた言葉でした。
コインと筮竹の違い
コインと筮竹では、変爻の出やすさが少し違います。3枚のコインでは、老陰も老陽も8回に1回の割合で出ます。一方、筮竹の本筮法では老陰が16回に1回、老陽が16回に3回の割合となり、陰と陽で変わりやすさに差が生まれます。
世界に広がった八卦
17〜18世紀のドイツの哲学者ライプニッツは、宣教師を通じて知った六十四卦の図に、自分の考えた二進法との共通点を見いだしたことで知られています。また、大韓民国の国旗「太極旗」には、乾・坤・坎・離の4つの卦が描かれています。
「必ず当たる」ものではない
易は未来をぴたりと言い当てる道具だと思われがちです。しかし『易経』の言葉は短く象徴的で、読む人に大きな解釈の幅を残しています。出た卦は、状況を別の角度から見直すきっかけとして楽しむのがよいでしょう。健康やお金、法律にかかわる大事な判断は、易に任せず専門家に相談してください。
このサイトの易
質問を入力し、画面上で硬貨を6回投げて卦を立てます。卦の意味をもとに、AIが質問に合わせた読み解きを書きます。
参考文献
- コトバンク「易経」 https://kotobank.jp/word/%E6%98%93%E7%B5%8C-36170
- コトバンク「易」 https://kotobank.jp/word/%E6%98%93-36156
- コトバンク「十翼」 https://kotobank.jp/word/%E5%8D%81%E7%BF%BC-77466
- Encyclopaedia Britannica「Yijing」 https://www.britannica.com/topic/Yijing
- 三浦國雄『易経』角川ソフィア文庫(ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)、2010年
最終更新:2026-10-08