すす払い日本の年の暮れの大そうじ
年の暮れに、家の天井や梁にたまった煤やほこりを払い清める日本の習わし。江戸時代には12月13日と決まり、江戸城でも町の家でも一斉に行われました。笹竹や煤梵天などの道具、商家の胴上げ、今の大そうじへのつながりを紹介します。
日本(江戸の町など全国)平安時代の記録〜季節の大そうじ今も続いている
概要
すす払いは、年の暮れに家の中の煤(すす)やほこりを払い、清める日本の習わしです。「煤掃き(すすはき)」とも呼ばれます。昔の家では、かまどや囲炉裏、灯りの火から出る煤が、天井や梁(はり)に黒くたまりました。それを一年に一度、家じゅうで払い落としたのです。
江戸時代には、12月13日に行うものと決まっていました。この日は、正月を迎える支度を始める日とされてきました。今の年末の大そうじは、この習わしにつながるものとされます。
歴史
「煤掃き」という言葉は、927年に完成した法令集『延喜式』に、すでに見えます。鎌倉幕府の記録『吾妻鏡』にも、1236年に「御煤払」を行ったことが書かれています。
江戸時代の年中行事をまとめた『東都歳事記』によると、江戸城のすす払いは、寛永17年(1640年)の12月13日に始まりました。武家も商家も町の人々も、この日にならって家のすす払いをしたとされます。俳諧でも冬の題材として好まれ、1666年には西山宗因の「ささ竹をふる宮人や煤払」という句が残されています。
すす払いは、ただのそうじではなく、一年の区切りの大切な日と考えられていました。もとは、正月に迎える年神(としがみ)を祭る準備に入る日だったとされます。地方によっては「煤取り節供」「煤の年取」「十三日節供」などと呼ばれました。奉公人が入れかわる日とした土地もあります。
やり方と道具
江戸の町では、まず畳を上げてたたき、ほうきなどで部屋のすみずみまで払いました。天井や梁の煤を落とすには、長い竹が使われました。
道具の形は土地によって違います。葉のついた笹竹を使う所、竹の竿の先にわらを束ねてくくった「煤梵天(すすぼんでん)」や「煤男」を使う所がありました。使い終わった道具は粗末にせず、家の外に立てたり、辻に納めたりして、小正月のどんど焼きで燃やす所が多かったとされます。
東北地方の一部では、煤梵天に注連縄を張りました。北九州では、神棚や自在かぎ(囲炉裏の上から鍋をつるす道具)を払ったほうきを丸めて、神棚に上げる所がありました。すす払いの日に、門松にする松や竹を山から切ってくる地方もあります。
払い終わると、神棚に灯りをともし、小豆飯やだんご、赤飯などを供える家が多くありました。魚や煮しめを供える地方もあります。江戸の商家では、働いた人々に餅や酒がふるまわれ、胴上げをして祝ったといいます。胴上げのにぎやかな様子は、浮世絵などにも描かれています。
今の暮らしの中で
今は、12月13日にすす払いをする家は少なくなりました。年末の休みに入る12月の終わりに、ふだん手の回らない所までそうじする「大そうじ」として続いています。「大掃除」という言葉は、もとは春と秋の年2回、家の内外を念入りにそうじすることを指したと辞書は説明しています。年末の大そうじは、寺社のすす払いが家庭に広まったものともいわれます。
寺社のすす払いは、今も年の暮れの催しとして続いています。京都の東本願寺と西本願寺では、毎年12月20日に「お煤払い」があります。竹の棒で畳をたたき、舞い上がったほこりを大きなうちわであおいで外に出す様子は、年の暮れの京都の催しとして知られています。
よくある誤解・豆知識
もとは「13日」でした。 今の大そうじは大みそかの近くに行う家が多いですが、古くからの日取りは12月13日でした。この日を「正月事始め」と呼ぶ地域もあります。
煤は火の暮らしの名残りです。 電気やガスのない時代、家の中ではいつも火を使っていました。年に一度のすす払いは、そうした暮らしの中で欠かせない仕事でした。
道具にも意味がありました。 すす払いに使った笹竹やほうきは特別なものとされ、そのまま捨てずに、正月の行事まで取っておく土地が多くありました。
参考文献
- コトバンク「煤払い」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典・百科事典マイペディア) https://kotobank.jp/word/煤払い-83228
- コトバンク「大掃除」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・共同通信ニュース用語解説・世界大百科事典(旧版)) https://kotobank.jp/word/大掃除-447043
- nippon.com「師走(12月):煤払い・歳の市・餅つき・節分・王子の狐火」日本の年中行事、2023年11月25日 https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c11812/
- 京阪電車「京都・大津の催し 2023年12月」(東本願寺・西本願寺のお煤払い) https://www.keihan.co.jp/navi/kyoto_tsu/tsu202312.html
- 京都新聞「東西本願寺で年末恒例のすす払い」2015年12月20日 https://e.kyoto-np.jp/news/20151220/1702.html
最終更新:2026-10-17
このページは、世界のそうじと洗濯の習わしを、歴史と文化として紹介するものです。昔の洗い方には、今では危ないとされる材料を使ったものもあります。まねをするときは、洗剤や道具の表示に従ってください。